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松森教授らの研究グループが膜タンパク質の働きに深く関わる脂質を簡便に特定する方法の開発に成功しました。

  • 2019年2月19日(火)

 九州大学大学院理学研究院の松森信明教授と理学府博士後期課程 2 年稲田壮峰大学院生の研究グループは、福井大学医学部の老木成稔教授の研究グループと共同で、膜タンパク質に相互作用する脂質を簡便に特定する方法の開発に成功しました。

 生体膜には数千種類に及ぶ多様な脂質が存在しますが、なぜこれほど多様な脂質が存在するのか、その意義は解明されていません。一方、生体膜には膜タンパク質と総称される様々なタンパク質が埋まっています。膜タンパク質は、エネルギー生産、物質輸送、情報伝達など生命の維持に不可欠な役割を担うだけでなく、市販薬の半数以上が膜タンパク質に作用することから、医薬品開発の観点からも重要な研究対象です。近年、脂質がこれらの膜タンパク質と相互作用することで膜タンパク質の構造や機能を制御し、ひいては細胞の機能に影響を与えることが判明しています。しかし、膜タンパク質に作用する脂質を特定する方法がほとんどなく、数千種も存在する脂質の中から、どの脂質が膜タンパク質の働きに関係しているのかを絞り込むことは困難でした。

私たちは、表面プラズモン共鳴法と呼ばれる方法をベースとし、膜タンパク質と脂質の相互作用の強さを簡便に評価する方法の開発に成功しました。本手法では、センサー表面を比較的短い炭素鎖の膜で覆い、ここに膜タンパク質を多少埋もれた状態で結合させます。この炭素鎖の膜によって、より多量の膜タンパク質をよりセンサー表面に結合できるようになり、さらに不安定な膜タンパク質を安定化させることができました。これにより脂質と膜タンパク質の相互作用をより高い感度で検出可能となりました。この方法を用いて膜タンパク質に強く相互作用する脂質の特定に成功し、その脂質が膜タンパク質の性質に影響を与えていることを確認しました。今後、この方法を多くの膜タンパク質に適用することで、どのような脂質が膜タンパク質の機能を制御しているのかを明らかにすることができ、「なぜこれほど多様な脂質が存在するのか」という生物学の大きな謎の解明につながると期待されます。また、脂質の代わりに薬を使用すれば、膜タンパク質と薬の相互作用も解析できることから、医薬品開発への応用も期待できます。本研究は科研費 (JP15H03121) などの支援を受けました。

本研究成果は、平成 31 年 2 月 1 日 (金) に、学術誌「Analytica Chimica Acta」のオンライン版で公開されました。(https://doi.org/10.1016/j.aca.2019.01.042)

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