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イベント情報の詳細

イベント名 部分波展開法に基づく新たな積分方程式理論の開発
イベント種類 セミナー
対象 教職員向け 大学院生向け
イベント概要 題目:部分波展開法に基づく新たな積分方程式理論の開発
講演者:谷本 勝一 氏(九州大学 理学研究院 化学部門)
要旨:タンパク質のフォールディングや加水分解反応等の多くの生物学的過程及び化学過程は主に溶液中で起こり、系の溶媒和状態が溶質分子の構造や物性、反応過程に大きな影響を与えている。従って、系の溶媒和状態の指標となる物理量の溶媒和自由エネルギーは溶液内で起こる多くの生物学的及び化学過程を扱う上で重要な熱力学量である。溶媒和自由エネルギーを理論的に求める手法の一つに、分子性液体に対する溶媒和理論であるReference Interaction Site Model (RISM)法があり、現在までに溶液内で起こる多くの化学過程の解析に用いられてきた[1]。一方で、RISM法は化学過程が起こる前後の溶媒和自由エネルギーの相対値については比較的良い結果を与えるが、絶対値については定量性に大きく欠けることが知られている[2]。この定量性の問題を解決するために、Ten-noらは部分波展開(PW)法と呼ばれる非経験的補正法を提案した[3, 4]。従来のRISM法では溶質-溶媒分子間の相関をサイト間の距離のみに依存する関数とし、分子の配向については考慮していなかった。Ten-noらはこれに着目し、PW法をRISM法に適用して、溶質-溶媒分子間の配向に関する相関を取り込むことで、溶媒和自由エネルギーの定量性を大幅に改善することに成功した(RISM-PW法)[4, 5]。しかし、RISM-PW法はRISM法をベースとしており、巨大な生体分子の溶媒和の計算にそのまま応用することは難しい。そこで本研究では、PW法をThree-Dimensional RISM (3D-RISM)法[6]に適用することで、溶媒和自由エネルギーの定量性を改善し、かつ巨大な生体分子の溶媒和の計算への応用を可能とする手法を開発することを目的とした。

 本セミナーでは、初めに3D-RISM法にPW法のformalismを適用することで導出した3D-RISM法の新たな形式(以後、この形式を3D-RISM-PW法と呼ぶ)及び溶媒和自由エネルギーの計算式を紹介する。3D-RISM-PW法では従来の3D-RISM法では欠如していた、溶媒分子の配向に関する情報、すなわち溶媒分子の異方性を取り込むことができ、より実際の系に即した溶媒和状態を反映した計算が可能となる。

 続いて今回導出した3D-RISM-PW法を用いて467種の有機分子群の溶媒和自由エネルギーを計算し、従来のHNC closure、Kovalenko-Hirata (KH) closureを用いた3D-RISM計算及びHNC closureを用いたRISM計算、RISM-PW法によって得られた溶媒和自由エネルギーと比較した結果を示す。また、溶質分子の原子数の変化に対する溶媒和自由エネルギーの計算値の挙動について調査した結果と溶媒和自由エネルギーを静電項と非静電項に分割した結果も紹介する。これらの結果を基に、今回導出した手法の今後の展望について議論を行う予定である。

参考文献:
[1] M. Kawata, S. Ten-no, S. Kato and F. Hirata, J. Phys. Chem. 100, 1111 (1996).
[2] H.-A. Yu and M. Karplus, J. Am. Chem. Soc. 112, 5706 (1990).
[3] S. Ten-no and S. Iwata, J. Chem. Phys. 111, 4865 (1999).
[4] S. Ten-no, J. Chem. Phys. 115, 3724 (2001).
[5] S. Ten-no, J. Jung, H. Chuman and Y. Kawashima, Mol. Phys. 108, 327 (2010).
[6] F. Hirata ed, Molecular Theory of Solvation, Kluwer, 2003.
[7] D. L. Mobley, C. I. Bayly, M. D. Cooper, M. R. Shirts and K. A. Dill, J. Chem. Theory Comput. 5, 350 (2009).
[8] R. C. Rizzo, T. Aynechi, D. A. Case and I. D. Kuntz, J. Chem. Theory Comput. 2, 128 (2006).
開催期間 2017年12月7日 13:00〜14:30
会場 ウエスト1号館10階 情報学習プラザ(W1-A-1011)
定員 なし
参加費 無料
申込み方法 事前申込み不要
お問い合わせ先
担当
化学部門 量子生物化学研究室 植松祐輝
TEL
092-802-4138
E-Mail
uematsu◎chem.kyushu-univ.jp
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