理学は、抽象的な数学と、実用的な工学・化学・生物・医学・地球惑星学などの学問との間にあると言えます(右図)。
物理学の成果が他の学問に応用され、また他の学問の成果が物理学の発展を促してきました。例えば、溶鉱炉の温度測定の研究が量子力学誕生のきっかけとなりました。また、最近では物理の相対性理論が、工学的にGPSに応用され、カーナビゲーションとして我々の生活に役立っています。九州大学でも、物理学科と他の学科との共同研究が行われています。
現在の物理学には、素粒子・原子核理論、素粒子・原子核実験、物性理論、物性実験、宇宙物理、という分野があります。九大物理学科にもこれらの分野の研究者がいます。
研究する対象は、素粒子原子核理論・実験では原子核とそれより小さなもの、物性理論・実験では原子より大きなもの、宇宙物理では星や宇宙という大きなスケールのものです。さまざまな階層の自然現象を、実験・理論の両面から調べています。
また、現代社会においては情報の発生・伝達・認識・制御は非常に重要です。情報現象の研究は数学と物理学を基礎にして行われます。九大物理学科では、従来の「物理学コース」に加えて「情報理学コース」を設けています。
宇宙はどのように誕生し、進化してきたのでしょう。目の前にある物質はどのようにして生まれ、そして変化していくのでしょう。粒子宇宙論グループは、これらの点に関して、世界的研究をしています。
原子核の研究グループは、西日本で唯一のタンデム型加速器を駆使して、星が超新星爆発を起こして華やかに生涯を終えるのか、白色矮星になって静かな余生を送るのか、を決める実験を始めています。
原子・分子が形成する多体系を研究するグループは、金属・半導体や磁性体などの中の電子の挙動を、例えば高圧や高磁場など極限状態において調べています。
統計物理学のグループは、分子や砂粒・粉が集まったものの性質を調べています。このような系には、単純な法則にしたがっていながら予測不可能 な「カオス」という現象があり、また拡大縮小してもパターンが同じに見える「フラクタル構造」が現れることがあります。そのような現象がどうして生じるか、世界をリードする研究を行っています。
液体や高分子・生体系など複雑な物質を研究するグループは、これらの系でみられる複雑な構造と巨視的な物性との関係を明らかにしようとしています。
誘電体・超伝導・表面などを研究するグループは、ナノレベルの電子の運動や性質を実験および理論的に調べています。
AIBOによるサッカーを課題にした人工知能研究 情報理学のグループは、コンピュータを駆使して、自然界や人間社会における様々な現象や膨大なデータの中から、ある一定の法則を発見しようと努めています。また逆に、物理法則や化学方程式に基づいて、未知の自然現象をコンピュータの中で模擬的に実現し、可視化することにも挑戦しています。