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有機宇宙地球化学研究室

スタッフ

  • 奈良岡 浩 教授
  • 山内 敬明 准教授
  • 北島 富美雄 助教

宇宙・地球環境における有機物の存在と役割

 宇宙において最も存在度の高い元素である水素、酸素、炭素、窒素などは地球生命の基本骨格をなす有機化合物を構成する元素です。星間空間から隕石・宇宙塵などの地球外物質にも有機分子は存在し、有機物からどのように生命が誕生したかは大きな謎です。また、誕生した生命の活動は地球表層環境を大きく変えてきました。例えば、光合成などによって作られた有機物が堆積物中に埋没することにより、大気には酸素が蓄積されました。一方、堆積物や様々な年代の堆積岩中には地球史における生命活動の記録が刻まれており、生物が作り出したバイオマーカーと呼ばれる有機分子化石が生命と地球環境の相互作用の謎解きをさせてくれます。

図1 炭素質隕石中のPAHsの炭素同位体比(地球上では見られない値を持ち、2つの反応系列がある)

有機物は炭素の化学結合の多様性から、実に様々な化合物を形成します。また、その構成する炭素、水素、酸素、窒素は安定同位体(13C/12C, D/H,18O/17O/16O,15N/14N)を持ち、それらの同位体比は起源(source)と物理・化学および生物的過程(process)により変動します。よって、自然界に存在する様々な有機物の構造と同位体組成を研究することにより、宇宙・地球環境における化合物の成り立ちや生命活動を解析することができ、さらに地球史における環境変遷なども知ることができます。

隕石中の有機化合物の起源と生成過程に関する研究

図2 Kenna隕石(ユレイライト)中のダイヤモンドの顕微ラマンスペクトル

 地球外物質で最大約5%の有機物を含んでいる炭素質隕石があります。マーチソン炭素質隕石や南極産炭素質隕石にはアミノ酸やカルボン酸、多環芳香族炭化水素(PAHs)などの有機化合物が検出され、その存在状態(例えば、アミノ酸の左右構造の優位性)や安定同位体比を調べることにより、有機物の起源や生成過程を明らかにします(図1)。また、微小領域のラマンスペクトルや赤外吸収スペクトルなどの顕微分光の手法を用いることにより微小領域の炭素質物質の同定が可能となってきました(図2)。

 室内におけるシミュレーション実験を通して隕石母天体などで起こった反応や条件などの考察も行います。また、地球外物質に含まれる微量有機物の新たな分析法の開発も行っています。

様々な年代の堆積物に含まれるバイオマーカーの分析と地球環境との関係

図3 真核生物と真正細菌にそれぞれ特有なステランとホパンの化学構造

 地球史の古い堆積岩から現在の海洋や湖沼の堆積物には生物種に特有な指標有機分子(バイオマーカー)が含まれています。特にステランやホパン(図3)はそれぞれ真核生物と真正細菌の活動を表す指標とされ、生物進化の年代を決めるためにも用いられています。バイオマーカーの安定同位体比は生物の代謝と強く結びついており、地球の古環境(温度や酸化還元状態など)の変遷や水圏における栄養塩などに関連した一次生産などについて教えてくれます。

 また、統合国際深海掘削計画などによって採取した深海掘削堆積物を分析することによって、地球表層に匹敵すると言われる深層生物圏の研究や、ガスハイドレートと呼ばれる炭化水素ガスと水からなる氷が形成される際の微生物活動の研究も行っています。

古細菌の膜脂質の存在形態と地球環境との関連に関する研究

図4 好熱好酸性古細菌の培養と膜脂質

 地球上の温泉や高塩分度などの極限環境にも様々な微生物活動があることがわかってきました。これらは古細菌と呼ばれる生物界をなしています。古細菌は原始生命との関係が深い微生物とされ、極限環境(熱や強い酸性、高い塩分濃度)に強い生体膜構造を持っています(図4)。

 古細菌について,その姿を微生物側から研究する(代謝や極限耐性の研究)一方で、この膜由来の有機物でのフィールドでの探査と成分分析や、古細菌の生態、生理、そして地球上での活動状況を調べ、環境との関係を探ることを行っています。

化学進化と生命の起源に関わる実験的研究

図5 生命誕生に至る化学進化仮説

 地球史45億年の中で生命は38-35億年前の比較的早い時期に誕生したと考えられています。生物活動の痕跡をどのようにして評価かの分析・解析手法を開発することは重要なことです。また、地球初期におこった化学進化(図5)によって、生命誕生に必要な有機分子の片手構造(例えば、L-アミノ酸やD-糖)の構築や膜構造形成がいかに起こったかも研究します。