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地球外物質学研究室

スタッフ

  • 野口 高明 教授

さまざまな地球外物質から太陽系の形成から現在までを調べる

 現在私たちはさまざま種類の地球外物質を分析することで太陽系の形成から現在までを調べることができるようになっています。どの天体由来か分からない場合がほとんどなのが隕石や宇宙塵(大きさ2mm以下の地球外物質)です。一方、 月、ヴィルト第2彗星、小惑星イトカワから持ち帰られた物質を分析することも可能になりました。私は、隕石・宇宙塵・リターンサンプルを用いて、鉱物学的視点から研究してきました。特に、近年では、以下の二つのテーマについて特に研究を進めています。

大気の無い天体表面で何が起こっているのか?

 太陽系の大気の無い天体表面は、非常に過酷な環境に曝されています。これは単に大気がないことで昼と夜の温度差が非常に大きいというだけでなく、低エネルギーの陽子、ヘリウムイオン、電子などからなる太陽風に常に曝され、また、より高エネルギーの太陽宇宙線と銀河宇宙線にも曝されています。さらに、µm程度からはじまるいろいろなサイズのメテオロイド(流星物質)も衝突しています。こうした過程が影響して、特に、反射スペクトルの形状変化がおきることが月では知られており、宇宙風化作用と呼ばれています。月表面の未固結な物質である月レゴリス試料の研究により、スペクトル変化は微小なメテオロイドの衝突によって月物質のごく表面が加熱・蒸発し、それが再凝縮する際に形成されたnmサイズの微細な金属鉄のためであるとされています。私たちはイトカワ試料の極表面を観察して、イトカワの物質のごく表面ではどのような変化がおきているか明らかにしました(図1)。そして、イトカワでは太陽風照射がnmサイズの微細な金属鉄を形成する主要な役割を担っているのではないかと主張し、現在も論争が続いています。

図1 イトカワから持ち帰られた粒子ごく表面に見られる3種類の組織(野口ら、2013)

 本研究室では、イトカワ試料と共に月レゴリス試料も使って、太陽風照射によって試料ごく表面にどのような変化が生じるのか、その形成速度はどのくらいであるかを調べているところです。また、隕石に太陽風を模擬した陽子やヘリウムイオン粒を照射した試料も用いています。表面にどのような変化がおきているかを調べるには透過電子顕微鏡という装置を用いますが、この研究では、惑星系形成進化学分野の岡崎さんと共同研究を行っており、透過電子顕微鏡の組織観察と共に、実際に試料に撃ち込まれているヘリウム等の太陽風起源の希ガスを測定し、二つのパラメータを使うことで太陽風照射過程について新たな描像が描けるのではないかと考えています。その結果、特にS型小惑星の宇宙風化過程はどのように進むものであるか明らかにしたいと考えています。

小惑星と彗星の違いは本質的なものか?

 小惑星と彗星の違いは、コマや尾といった天体からの物質が放出していることが観測されるかどうかに基づいていました。一方で、岩石質の小天体が小惑星で、氷、鉱物、有機物の混合物(汚れた雪玉)が彗星であるとも言われてきました。しかし、近年、小惑星と認識されていた天体から物質の放出が見られたり、表面に水の氷が存在することが確認された小惑星が見つかるなど、両者の境界はあいまいになってきています。

 1980年代より彗星物質と考えられてきたChondritic porous interplanetary dust particles(CP IDPs)と呼ばれる宇宙塵の一種があります。2006年にスターダスト探査機がヴィルト第2彗星の塵を持ち帰った時、CP IDPに似た物質が捉えられていると予想されていましたが、実際には、隕石的な物質が含まれており、CP IDPに似た物質が含まれているかどうかははっきりしませんでした。一方、小惑星には太陽系外縁天体だったものが巨大惑星の軌道の変化によって、小惑星帯にもたらされたものがあるとの説も提唱されるようになりました。私は南極のドームふじ基地近くの表層雪に含まれる微隕石(宇宙塵の一種)がどのような鉱物学的な特徴を持っているか研究してきました。その結果、CP IDPに似たものから、ある種の炭素質コンドライト隕石に似たものまでさまざまな物質があることが分かりました。これらが一体小惑星由来なのか彗星由来なのかを推定するのにも、太陽風起源の希ガスの分析が重要です。太陽風はエネルギーが低いため、鉱物のごく表面に捉えられています。宇宙塵が大気に高速で突入して加熱を受けると、その一部は宇宙塵から放出されます。宇宙塵を段階的に加熱すると、大気圏突入時の最高温度より高い温度で希ガスが放出されるため、希ガス放出温度は大気圏突入時の最高温度の指標となります。たくさんの宇宙塵について、鉱物学的特徴と希ガス放出温度の関係を調べることで、小惑星体起源と考えられるが彗星的物質であるもの、あるいは、その逆の特徴を持つ物質を見出そうとしています。この研究がうまくいけば、物質科学の側面から、小惑星と彗星の区別ができるかどうか明らかにできるだけでなく、巨大惑星の軌道進化についても制約を与えることができるかも知れません。この研究も惑星系形成進化学分野の岡崎さんと共同で行っています。