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リン脂質 混ぜると段階的変化(

リン脂質集合体の構造変化—細胞膜からミセルまで—を解明

生物の体の中で重要な役割を果たすリン脂質はほとんど水に溶けず細胞膜(リボソーム)などの集合体を形成する。一方で水に溶けやすいリン脂質は洗剤と類似のミセルなどの集合体を形成する。化学科の高城さんは、これら二つのタイプのリン脂質の混ぜる割合によって、集合体の構造が段階的に変化することを明らかにした。

高城 雄一(理学府 化学専攻)

リン脂質は1つの分子の中に、水になじみやすい部分(親水部)と水になじみにくい部分(疎水部)がある。疎水部は炭素と水素の化合物(炭化水素)が鎖状につながってできており、炭化水素の鎖の長さによってリン脂質の性質は大きく二つに分けられる。

図1

炭化水素の鎖が長く水にほとんど溶けない長鎖リン脂質は、水中で数百から数千個の分子が集まってベシクルという集合体を作る。ベシクルの構造は生物の細胞膜と非常に似ており、細胞膜のモデルとして広く研究に用いられてきた。一方、炭化水素の鎖が短く水にもある程度溶ける短鎖リン脂質は、洗剤などに用いられる界面活性剤と同じような性質を持ち、水中では数十から数百個の分子が集まってミセルと呼ばれる比較的小さな集合体を作る。さらに、長鎖リン脂質と短鎖リン脂質を混ぜたときにできる集合体の構造についても研究が行われ、ベシクルともミセルとも異なる集合体が見出されてきた。

図2

このようにリン脂質の性質を明らかにするために、ベシクルやミセル、二つを混ぜたときの集合体の構造を明らかにする研究が進められてきた。しかし、長鎖と短鎖のリン脂質をどの割合で混ぜるとどんな構造ができるのかよく分からず、リン脂質が作る集合体の理解を妨げていた。そこで高城さんは、長鎖リン脂質ベシクルの入った溶液に短鎖リン脂質を徐々に加えて、溶液の状態や物理的性質、集合体の構造の変化を調べた。

その結果、長鎖と短鎖のリン脂質を混ぜる割合や温度によって、集合体の構造も段階的に変化することが示された。例えば、長鎖リン脂質の割合が高いとベシクル状の構造で安定するが、短鎖リン脂質の割合を増加させると平面状の二分子膜(下図左から2番目)が形成される。さらに短鎖リン脂質の割合を増加させると最終的にはミセル状の構造となった。

図3
図4
 集合体の電子顕微鏡写真。左がベシクル、右がベシクルとミセルの中間の二分子膜状の集合体。

高城さんは、「長鎖リン脂質にとって最も安定な平面二分子膜と、短鎖リン脂質にとって安定な曲がった膜構造を共に実現するために、このような集合体の変化が起こるのだろう」と話す。「この研究成果をもとに、リン脂質が作る集合体の性質の統一的な理解を目指したい。」

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タイトル
Structural and morphological transition of long-chain phospholipid vesicles induced by mixing with short-chain phospholipid
著者
Yuichi Takajo, Hitoshi Matsuki, Hiroki Matsubara, Koji Tsuchiya, Makoto Aratono, Michio Yamanaka
掲載誌
Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 76:571–576 (2010)
研究室HP
界面物理化学研究室