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生体情報化学研究室

スタッフ

  • 久下 理 教授
  • 荻島 正 准教授
  • 谷 元洋 准教授
  • 宮田 暖 助教
  • 劉 暁輝 助教
本グループは、真核生物における生体膜とオルガネラの生合成、あるいは細胞間と細胞内のシグナル伝達に関連する脂質の分子細胞生物学的・化学的基礎的研究を行っている。また、膵臓で合成される局所ステロイドホルモンの生理機能に関する研究も行っている。現在は主に、1. リン脂質のオルガネラ間輸送、及びミトコンドリア内輸送の分子機構の解明、2. 複合スフィンゴ脂質の生物学的機能の解明、及び 3. 小胞体ストレスにさらされた膵臓細胞の生存に及ぼす非全身性局所ステロイドの影響の解明を試みている。

1. リン脂質のオルガネラ間輸送、及びミトコンドリア内輸送の分子機構解明

 リン脂質二重層は、細胞の生命および機能の維持において多くの本質的役割を果たす全ての生体膜の基本構造である。しかしながら、リン脂質二重層の生合成に関する研究では、根本的な2つの問題が未解決である。1つは、生体膜におけるリン脂質の組成と総量がどのような機構で調節されているかである。もう一つの問題は、リン脂質が2つの異なる生体膜間や脂質二重層の異なるレイヤー間をどのように移動するかである。リン脂質の生合成は、小胞体 (ER) およびミトコンドリアのような限られた細胞小器官で起こるため、多くの生体膜はそれら自身のリン脂質を産生することができない。したがって、リン脂質の合成部位からそれらの最終的な機能部位への細胞内輸送は、生体膜生合成における本質的な事象である。リン脂質輸送の分子機構としては、可溶性担体タンパク質、輸送小胞、およびドナー膜とアクセプター膜との接触領域を含むものなど、いくつかの機構が提案されている。しかし、提案された機構の重要性は依然として不明であり、リン脂質輸送過程には多くの未解決の問題が存在する。

 ミトコンドリアは、カルジオリピン (CL) およびホスファチジルエタノールアミン (PE) が豊富な特有のリン脂質組成を有する二重の生体膜で囲まれたオルガネラである。出芽酵母 (Saccharomyces cerevisiae) のミトコンドリア内膜 (MIM) は、CLおよびPEの生合成に必要な酵素群を含む。しかし、CL生合成の出発原料であるホスファチジン酸 (PA) とPEの前駆体であるホスファチジルセリン (PS) はERで合成されるため、ミトコンドリア内でCLおよびPEが合成されるためには、PAとPSがERからMIMに輸送されなければならない。また、MIMで合成されたPEは、再びERに輸送され、ERの酵素により三段階のメチル化を受けて、酵母で最も豊富なリン脂質であるホスファチジルコリン (PC) に変換される。従って、ミトコンドリア外膜を横切るERとMIMとの間のリン脂質輸送は、リン脂質ホメオスタシスのための決定的なプロセスである。しかし、この輸送の分子機構はまだ多くの部分が解明されていない。我々は、この問題に対処するため、出芽酵母におけるリン脂質の遺伝学的および生化学的研究を行っている。

Mol cell 01
Mol cell 02

2. 複合スフィンゴ脂質の生物学的機能

 複合スフィンゴ脂質は、長い間、真核細胞の形質膜の構造的構成要素の1つとしてだけ考えられてきた。しかしながら、この20年ほどの間に、2つの領域において複合スフィンゴ脂質に関する研究が発展してきた。第一に、複合スフィンゴ脂質は、ステロールと集合し、効率的なシグナル伝達や膜タンパク質の局在に必要なプラットフォームとして機能する脂質マイクロドメインを形成する。第二に、セラミドをはじめとする複合スフィンゴ脂質の代謝産物は、様々なシグナル伝達系を調節する新たなクラスの脂質メディエーターとして捉えられるようになった。哺乳動物では、複合スフィンゴ脂質の分子種の数は数千を超えており、複合スフィンゴ脂質の多様な生物学的機能は、この構造多様性に起因すると考えられている。

Mol cell 03

 酵母Saccharomcyes cerevisiaeにおける複合スフィンゴ脂質の構造多様性は、哺乳動物細胞と比較して比較的単純であり、酵母はスフィンゴ脂質の構造多様性、複雑性の生理学的意義を調べるのに有用なモデルとなる。我々の研究の目的は、酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける複合スフィンゴ脂質の構造多様性と多機能性との関係を理解することである。以下の三つは現在のプロジェクトである。1) 様々なストレス応答における特定の複合スフィンゴ脂質 (MIPC) の生理機能、2) 複合スフィンゴ脂質の組成の調節機構とその生理学的意義、3) セラミドを介したシグナル伝達系の分子メカニズム。

3. 膵臓β細胞の非全身型 (ノンシステミック) ステロイド

 膵臓β細胞におけるシトクロムP45017α, lyaseの発見を機に、ステロイド合成に拘わるほとんどの酵素のmRNAがこの細胞に発現していることを見いだした。このため、膵臓β細胞では、アンドロゲン以外にもプロゲステロンやグルココルチコイド、さらにはエストロゲンまでが合成され得ること、合成されたステロイドはパラクラインやオートクラインとして局所的に作用することが示唆される。この膵臓ノンシステミックステロイドの機能を明らかにするために調べたところ、2型糖尿病モデルである小胞体ストレスを惹起するタプシガルギンを細胞に作用させると、ストレスに対抗して、ステロイドを合成することを見いだしている。

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